医学研究

ヒトSOS応答のストレス理論を構築するのに役立った実験システムの1つに、培養ヒト細胞RSaがあります。その理由は、以下の通りです。即ち、興味あることに、RSa細胞は、放射線や化学物質などのストレス要因(ストレッサー)の致死作用にある程度高感度です。もしも、細胞が超高感度ですと、死に絶えて、実験解析に供せません。したがって、あくまでも、放射線や化学物質を作用させてもある程度生き残れる細胞が必要です。致死作用に対する細胞内での応答メカニズムを解析可能とすることができる細胞が必要なのです。そのような細胞として、RSa細胞は適切なのです。放射線や化学物質がどのようにして細胞毒性を発揮するかを知るのに適しています。

探究する化学物質としては、カドミウムを用いました。カドミウムは、染料・安定剤・電池など幅広く産業界で用いられている重金属です。一方、カドミウムの毒性については、骨や関節が脆弱となるイタイイタイ病 が大きな社会問題となりました。さらに、慢性毒性では、腎障害をはじめとする様々な疾患を引き起こすこと、あるいは癌原因子であることも知られています。環境中のカドミウムは、土壌の酸化条件によりイオンとして溶出し、農作物に吸収されて蓄積されます。日本国内の土壌は大半が中性から酸性であるため、カドミウムの溶出条件に適していると考えられています。そこで、米などの食物は、カドミウムによる汚染を受けやすいことが知られています。また、一度人体に入ったカドミウムは排出されにくいと考えられており、低濃度のカドミウム暴露による健康影響が懸念されています。
カドミウムの毒性作用のメカニズムについては、活性酸素種を介した障害であるとの報告があります。活性酸素種による障害防止にライフセラミックスが役立つとの示唆をすでに得ています(⑤参照)。一方、カドミウムの致死毒性に対する防止研究には、高感受性の細胞を用いることで、解析が可能となります。そこで、RSa細胞がカドミウムに致死高感受性であることを見出し、次に、ライフセラミックスの関わりを検証しました。

RSa細胞の生存率は、培養液中の塩化カドミウム濃度(0.2~50μM)依存的な細胞致死毒性がみられました。ところが、ライフセラミックスで処理した培養条件下では、カドミウム致死毒性はみられなくなりました。カドミウムがライフセラミックスへ吸着し、細胞致死毒性を見られなくすると示唆されます。

動画 掲載ページ 掲載年月日

留学生との懇談会 —承徳医学院 視察団の来校—
国際交流 2013.3.22

無から有を生む生命科学探究の四十五年間—ヒトのSOS応答生理機能の創成および放射能汚染調査の残照—
生涯学習講座 2012.6.19

ヒトSOS応答研究基盤による健康長寿素材の開発情報(2)ライフセラミックス素材について
オンライン書庫 2016.6.20